奈良で初めてのフォトウォークに参加してきた話
X100フォトウォーク@秋の奈良
「写真好きで集まって撮り歩く」というのは界隈ではよく聞く話ですが、ちょっとクセのあるフォトウォークに参加してきました。参加できるのはFUJIFILMのX100系統ユーザーのみという機種縛りフォトウォークです。先に申しあげますが作例重視の記事ではなく、楽しかったぜー的なやつですのでご承知おきください。写真はすべてなんらかのフィルムシミュレーションによるJPEG撮って出しです。
X100シリーズはハイエンドコンパクトデジカメとしての立ち位置的には唯一無二ながら、それゆえの独自性というかガラパゴス感があるカメラです。富士フイルムユーザーには有名なカメラだと思いますが、初めてカメラを持つ人が持つようなカメラではない気がするし、僕も薦められません。大ハマりするか不幸な大事故が起こるかの2択だと思いますが、残念ながら後者が多いことは想像に難くないかなと…。てかまず値段が高い。笑でも一方でそのガラパゴス感が連帯意識を生む気がしています。
このイベント参加はたまたまTwitterでharenohiというフォトサークルの案内で、FUJIFILMのX100系ユーザーのみが参加するフォトウォークが奈良であると聞き、主催の方に恐々と参加を希望してみたのがきっかけです。ちょうどその頃、秋口くらいだったかと思いますが、僕は欲しい欲しいと恋焦がれていたX100Fを購入したばかりのタイミングで、いやーこのカメラ良いな!と思っている時分であったのです。しかも場所は僕が中学高校時代を過ごした懐かしの奈良で、勝手にこれ俺めっちゃ対象者やん!と思ったのを覚えています。
参加を申し出たところ快諾いただき、あっという間に11月のフォトウォーク当日となりました。当日までに参加者は9人となり、主催のMiyachiさんと一緒に来てくださった奥さまが首から提げるX100Fと合わせてなんと10台!メンバー構成としては初代X100の無印が2台と最新のX100Fが8台という布陣で、集合写真はなかなかのインパクトでした。富士フイルムのX100広報チームに届いてほしいくらい笑
(この写真は主催のMiyachiさんからお借りしました!)
一足先に着いてなら仏像館へ
あの日は奈良公園の芝生でどうにか鹿のフンを避けて逆立ちをしたらそのまま天地が本当にひっくり返って空へ向かって真っ逆さまに落ちていくんじゃないかというくらいの、文字どおり抜けるような晴天でした。ちょうど「関西文化の日」にあたったらしく、奈良国立博物館のなら仏像館が無料開放されていると聞いたので、朝から奈良入りをして仏像館を覗いてきました。
この仏像館、奈良国立博物館の前身である旧帝国奈良博物館の建物が使われており、設計はあの片山東熊です。誰やねんという方もいるかと思うので雑に説明をすると、明治開国後の日本は富国強兵を掲げ、様々な技術力を高めようとしていました。建築レベルも引き上げるべくイギリスからジョサイアコンドルという外国人建築家(オーキド博士)を招き、その下についた弟子が東京駅で有名な辰野金吾(サトシ)とこの片山東熊(シゲル)です。
慶應大学に作品のある曽禰達蔵も同門の同級生ですが、この2人が1番有名な気がします。2人はライバルとして日本の建築界を高めていくのですが、僕が覚えた2人の弟子の作品が辰野金吾は赤っぽいの東京駅で片山東熊は緑っぽい旧帝国奈良博物館なので、勝手に僕はポケモンになぞらえたイメージを持っています。性格とか立場とか細かいことは考慮していないし、知りません…すみません…。
無料観覧日の午前中には西側の玄関が開放されると聞いて勇んでファサードを見にいったのですが、8年間も奈良に住んでいたのに扉が開いてるところは初めて見ました。いやー来てよかった、かっこよい。しかし改めてじっくり見るとなるほど、やっぱりぺらぺらです。明治期の日本人が作る西洋風建築は彫りが浅いというか、西欧と比べてぺらぺら感があります。片山東熊で言うと四谷の迎賓館とか東京国立博物館の表慶館も同様です。これが当時の西洋風日本建築らしさである!と言えるくらいどこもそうなのでなんなら僕はそれが好きだったりするのですが。
あとヨーロッパなら紋章が入るんだろうなという図形の中央部分が空っぽのままになってるのも「何入れていいかわからんかったかなぁ」となるので見ていて飽きません。家紋とか入れといたらよかったんとちゃうん?
仏像館の中は撮影禁止であったので写真はありませんが、行ってよかったです。ざっと回るだけで、御顔と法衣の掘られ方で奈良時代の作か平安時代の作かがなんとなーく分かるようになりました。仏像だって製作者や作らせる側の立場からすればやっぱ流行りがあるわけで、建築や音楽と一緒なのかもしれません。書籍もネットもないのでその変遷や伝播が緩やかなだけで、ブームという概念は確実にありました。説明板とセットのいろんな時代の仏さまをずらっと並べて比べられる場所はそうないと思うので、是非いってみてください。
お昼ご飯は僕のツレである友人と合流し、東向き商店街の「釜粋」といううどん屋でお昼ご飯を食べました。こうツレとか言うと偉そうですが彼は僕の写真師匠の1人です。すこーし並びますがこの窯粋さんはシュッとした店構えとダシとコシで僕のお勧めのお店です。僕が高校生の頃には無かった気がしますが、お腹いっぱいにもしてくれるし、奈良に来ると食べちゃう名店です。やっぱ美味いなぁと一生懸命に食べてたら写真すら撮ってませんでした。(アクロス オン アクロス)
フォトウォーク開始
久しぶりの奈良にはしゃいで前置きが長くなっていますがやっと本編です。14時ちょうど、興福寺五重塔前の松の木の下からフォトウォークは始まりました。
(興福寺東金堂)
参加者の皆さまとは初対面のため、手がかりは首から提げられるかハンドストラップで巻かれているであろうX100シリーズしかありません。待ち合わせに指定された場所に行くと、それらしきカメラを持って円になってる集団を見つけました。改めてここで思ったのはみんなX100Fいろいろ触ってんなーということ。シルバーかブラックなのかだけではなく、ケースやレリーズボタンやテレコンまで、いろんな姿が見られて面白かったです。
ゆるっとした自己紹介をしたのち、東大寺へと歩きました。「奈良が初めて!」という方もいたのでやっぱり定番のコースでしょう。紅葉の盛りに絶好の行楽日和ということで、東大寺参道では人の渦の洗礼を受けました。奈良ってこんなに人来るんだっけ…?
南大門の前では鹿タイムをとりました。ちなみに他の皆さんの写真を見ると鹿が何枚か入ってるのですが、僕はこの時の1枚だけ。奈良にいた期間、特にこの辺りをウロウロしていた高校時代に圧倒的な鹿耐性を身につけてしまった僕は鹿に感性をはたらかすことが出来ず、シャッターに指がかからなかったものと考えられます。僕的には駅前ロータリーにいるハトみたいなもんやからなぁ。あの頃は野良犬や猫の方がまだ珍しかった。笑
ちなみにこの東大寺南大門は大仏様(だいぶつよう)という建築様式でとても有名です。1番わかりやすい特徴はたくさんの貫(ぬき)で、梁に梁を通しまくって組みまくって強度を上げています。整然と材が互いに組み込まれまくっている様は圧巻ですので是非見てみてください。
大仏様は鎌倉時代の建築様式なのですが、平安末期に平氏に焼かれてしまった東大寺を再建した時に使われた様式が他にも広まって大仏様と呼ばれたという説があります。東大寺大仏殿は戦国時代にも焼けてしまっていますが、江戸時代に再建した時にこの大仏様を踏襲して再建されています。江戸時代の人々が鎌倉時代の建築を再建する時に、ちゃんと当時の様式を考えて再建しているというのが、偉いなというか昔もそういう意識ってあったんやなとしみじみ思います。
東大寺の鐘楼と三月堂(法華堂)
東大寺大仏殿から手向山神社に向かう参道の辺りの紅葉がとても綺麗で、ここでもたくさんの写真を撮っていました。本当に1番よい紅葉タイミングで開催されていたと思います。こんなに紅葉が綺麗な奈良を初めて見ました。
天気もよいし日没が綺麗だろうと二月堂へ向かいます。急に人が減って静かになり、この辺りの鹿はみんな表の方に比べてお腹を空かせているので鹿せんべいコールも多めです。奈良公園では手前の方で鹿せんべいをあまり消費せずに奥まで取っておくとめっちゃモテると思います。
それくださいそれくださいとお辞儀をすることで有名な奈良の鹿ですが、戦前からお辞儀をする鹿はいたそうです。あとしつこく絡まれたら両手をパーにして「もう無いよ!」と手のひらを見せてみてください。鹿って賢いんやなぁと思いますがたいてい諦めて帰って行きます。
二月堂へと歩く道にも見所が2つあります。鐘楼と三月堂です。この鐘楼と三月堂は大仏殿から距離があったので平家の南都焼討の際にも延焼せずに残ったとのこと。戦国時代の大火の時は延焼した火をお坊さんたちで必死に消したそうです。あぁ、そういうの価値を感じます。どちらも国宝に指定されていて、人気もなくポツンとありますが激レア物件です。奈良や京都で育つとどうしても感覚が麻痺するのですが、国宝建築というものは日本中に227件しかありません。大仏殿も鐘楼も三月堂も正倉院も二月堂も国宝ですので、徒歩5分圏内で日本中の2パーセントが拝める場所なんてそうそうないです。
この鐘楼には鐘守という人々がいて、一族代々で鐘を守る仕事をしている人たちがいるとこの前テレビで見ました。先祖代々鐘を守っていく一族ってすごいな…。鐘も国宝でデカさゆえ倍音が豊かでヤバいと書いてあったので、今度は音を聴いてみたいです。
あと三月堂はもともと奈良時代からあった建物にもう1つ建物をくっつけているので、屋根や手すりに明らかに付け足しの跡があります。「つなぎ目がある」と思って見るとすぐわかると思うので見てみてください。あと堂内の仏様もめっちゃいいです。昔入ったことがあるのですが、絵が描けたらあのお堂の中に並ぶ仏様を描いてみたかったです。僕は絵はからきしダメですが。
二月堂からの夕日
なかなか辿りつきませんでしたがようやっと二月堂です。崖にせり出たお堂が美しいです。ここは生駒山に沈む夕日をバックに奈良盆地を一望できて、人も少なく穴場でめっちゃオススメです。…だったのですが、行ったらめちゃくちゃ人がいてびっくりしました。なんじゃこれ。
みんなで二月堂の手すりに並んで夕日を見る様子はそれはそれでよかったんですが、なんかもっと少ない人の中で山際に消えゆく夕日を眺める緩やかな時間が過ぎていくみたいな場所だったので驚きました。SNSの発信もあって穴場というものがなくなっていくねという話をしたりしましたが、ほんまにそうかもしれません。美瑛の青い池なんかも前は穴場だったそうですが、今では観光バスの駐車場までありますからね…。
3,4年前に来た時にNikonの一眼レフで夕焼けを撮った写真を探し出しましたが、やっぱ人の数が違いますね。
それでも二月堂はやっぱり眺めもいいし石段も綺麗だし、裏参道は石畳で美しいので勧めます。二月堂の外れでたけしさんがずっと持っていた団子を食べました。前に妻に勧められた近奈良(近鉄奈良駅)の「たまうさぎ」だと思って頂いたのですがよく読むと違うみたいで、いま調べたら近奈良のたまうさぎは「だんご庄」というお店と姉妹店だそうで、これはそこの団子だった気がします。美味しい。
(1本の団子を分け合う主催夫婦に向けられるX100Fの群れ)
写真おまけ
X100Fで撮ったものではないのですが、当日持って行っていたフィルムカメラの写真を現像したので追加しておきます。二眼レフにFUJIFILMのPro160とFM3AにAcross100を詰めていったやつです。
美しい紅葉なのに白黒フィルムを詰めて行ってしまったのには最初は後悔していましたが、現像した写真を見て階調表現の素晴らしさに泣いたのでこれはこれでよかったですね。
それからミノルタオートコード×FUJIFILMのPro160です。ほんと中判フィルムの写りは魔物。
打ち上げはスパイスカレーで
全行程を終えたあと、Miyachiさんが予約してくれていた「タリカロ」というならまちにあるスパイクカレー屋に行きました。「ガチなところなので!」と聞いていたのでとても楽しみにしていましたが、なるほどガチでした。4種のカレーをライスにかけていって食べるスタイルなのですが、右から数えて3つ目と4つ目のカレーのカーラいことカラいこと。書きながら急に舌と喉が痺れる感覚が蘇ってきました。
ミックスさせていい具合に食べてね!という趣旨なのだとは思いますが、どれも辛いのに美味しいという状況がありスプーンを繰り出さずにはいられない。けれどやっぱり辛い。でも食べたいみたいなジレンマが全員にあったと思います。
ラッシーをがんがん頼みながらスプーンは進み、キャーキャー言いながら食べ終えました。たぶん我々はやかましかったと思います、すみません。あともはやカレーを食べること自体がエンターテイメントすぎて、ランチに続いてここでも写真を撮ることを忘れてました。まぁ美味しく楽しかったということで。
フォトウォークまとめ
いろんな方がいるフォトウォークなるものに参加したのは初めてでしたが、とてもよかったです。当日もいろんな話ができましたし、後日あがってくる素晴らしい写真を見て「え…同じカメラだよね…」とたまげるのも含めて経験になりました。
また遊びに行きたいです。主催のMiyachiさんはじめharenohiの皆さま本当にありがとうございました。たけしさんは他のブロガーの方の記事でよくお見かけしていたので、有名人にあった気分で嬉しく妙な感じがしました。なんか奈良の話ばかりしてしまいましたが、これにて完とさせていただきます。