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Beatlesモノラルステレオ比較③

A Hard Day's Night【1963】

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ビートルズの音源比較、3rdアルバムまで来て今回はA Hard Day's Nightです。ビートルズ初の主演映画の収録曲集ですが、れっきとしたオリジナルアルバムで、映画は観ずとも大丈夫です。めちゃいいアルバムです。というか今となっては映画は観てないけどアルバムは聴いたという人がほとんどなんじゃないでしょうか。売れっ子になり、波に乗ってるバンドの勢いが感じられる楽しいアルバムです。あと作曲数の多さで分かるようにジョンレノン色が強く、初期ジョンのボーカルにしびれることのできる曲が多くあります。映画なしで普通に完全なる満足が得られます。

とは言いつつも是非映画も観てください。ビートルズの映画はA Hard Day's Nightがダントツで1番いいです。モノクロなのも含めて最高です。売れっ子バンドになった勢いや、4人の仲の良さが滲み出ていて、観てるとニコニコを禁じ得ません。当時プレスリーの影響か「音楽で成功したら映画も」みたいな流れがあり、4人も「成功したから映画に出たかった」みたいな話を残しています。

僕はイギリスに行った時この映画のロケ地巡りをしました。印象的な映画のオープニングシーンはロンドンのマリルボン駅ですが、ここで走ってコケてみたり新聞を読んだりしました。くそ楽しかった!気になる方は映画を見てください、ほんとにおススメです。

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・急に進歩した?ステレオ録音

例によってCD音源になっている1987モノラル、2009ステレオ、2009モノラルを比較します。ちなみにAppleMusicとSpotifyにあるのは2009ステレオでした。

https://itunes.apple.com/jp/album/a-hard-days-night/401132835?uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog

このアルバムを聴き比べてまず1番の感想はステレオ録音の進歩です。ボーカルや楽器が妙な分離をしていない!違和感がない!ボーカルがちゃんとセンターになっているのが大きいですね。これだけでずいぶんと自然に聴かれます。僕も学生時代に音楽はやっていましたが、レコーディングなんてものはしたことがなく、ましてトラック振りなんてことにはガチ無知なのですが、どういう考えを持ってやるものなんだろう。サードアルバムでこんなに出来るなら最初からやればよいのに…とか思ってしまうくらい、ナイスな出来です。結論から言うと、2009ステレオがその勢いのまま逃げ切って僕の中では優勝です。

ちなみに4枚目のBeatles For Saleでは泣き別れみたいなことは全くありませんが、若干分離が目立つステレオになります。全然許容範囲ですが、3rdのステレオの方がよくね?といつも思っています。

 

・アナログの香りが残る1987モノラル

まずは元祖CDの1987モノラルから。ジョージマーティンがビートルズCD化の際にミックスしたもので、モノラル音源が採用されています。おそらく1番元気のあるミックスで、ボーカルがぐいぐい他を引っ張っていく印象です。なんとなく他と比べるとアナログの音像に近い気がします。音が配置してある空間は狭めですが、それと引き換えに、演奏に塊感というかパンキッシュな威力を得ています。これもいいですね。

30年も前のミックスですが、ジョージマーティンは流石だなと思います。「新しいほうがいいね!即断!」って全然ならない。

 

・おとなしめで聴きやすい2009モノラル

最も中庸かなと感じたのが新モノラルでした。適度な塊感を残しつつ、楽器1つ1つの形は1987版より分かりやすいです。音が鳴っている部屋の広さも少し広くなった感じがして聴きやすいバージョンだと思います。優等生タイプ。

ただ、ボーカルが引っ込んでいる分、なんかこもってしまったような感じもしました。なので個人的には1987が銀賞で、これは銅賞でした。

 

・自然かつ鮮やかな2009ステレオ、優勝。

ということで金賞ゴールドは2009リマスターのステレオ版でした。3rdアルバムにして新リマスター版が初優勝ですね。

まず、前述もしていますがステレオながらトラック振りが自然になりました。ボーカルやリズム隊がちゃんとセンターに寄っていて気色悪さがありません。聴きやすい!音はあざあざと鮮やかになりました。モノラルよりもかなりクリアに聴こえるようになっています。ギターの歪み方が分かるようになったのと、ボーカルにツヤもあります。曲によってはボーカルがダブルトラックになっているものがあり、それもボーカルのツヤっぽさに拍車をかけています。If I FeelとかTell Me Whyあたりが分かりやすいです。

音のクリアさが味方して、A Hard Day's Nightの冒頭1発目のジャーン!は最高ですね。音楽界の和音1発ランキングで目の覚める1撃の上位であること間違いなし。この和音を再現したいというファンは多くいるはずで、イギリスの大学が調査論文を発表したという話までいつものサイトには書いてありました。僕はまだ読んでないですが。Tell Me Whyのジョンのボーカルも鼓膜の全部を使って聴いてください。あの曲のメロのジョンの声の色っぽさったらないと僕は思っています。「If you don’t really can’t go on〜」の部分、ジョンの声が少しだけしゃがれる瞬間に自分の脳から快楽物質が出るのを感じるのですが、そんなファンは多いんじゃないでしょうか。You Can’t Do Thatのリズムギターも少し当たった音がファンキーでカッコ良いです。ジャッキリと聞こえてきてよい感じです。ちなみにこの曲はシュープリームスがカバーしているのですが、「モータウンでやったらこうなるよね!」という期待の、ど真ん中をいくソウルフルな仕上がりで最高です。

 

あと1987CDに馴染んできた方々は、これもステレオを聴くと面白いと思います。モノラルとミックス違いなものがちょいちょいあります。I Should Have Known Betterのイントロハーモニカは微妙に違いますし、If I Feelの入りはステレオにはボーカルのトラッキングズレがあります。詳しくはこちらのサイト大先生に依りますので、興味があれば旧版CD かモノボックスを探してみてください。https://beatlesdata.info/alternate.html

 

・「1」収録のステレオバージョンについて

2015年にリマスターされた「1」にもこのアルバムから2曲、Can’t Buy Me LoveとA Hard Days Nightがエントリーされていますが、サブスク音源にもあるので聴いてみてください。めっちゃ鮮やかです。「これ2015年にレコーディングしたの?」って感じです。ギターソロとかすごくよいです。とりあえずの1枚的位置付けであるベストアルバムがこの音質だなんてすごいと思います。昔はこうではなかったのですから。僕も子供がもしできたら、言語を理解するより前からこれを勧めたいです。もちろん「1」を聴いたら各アルバムも聴いてね!としつこく言いながら。

 

次は「クリスマス商戦に向けて作られたアルバム」という情報を昔に読んだだけなのに、僕はクリスマスになる度に聴きたくなるBeatles For Saleを書きます。